緩速ろ過 (生物浄化法) 清潔な水は水道局から買わなくても自作システムで手に入れる方法もある
飲み水は誰のものか?
私たちが普段飲んでいる水は水道局が管理する浄水場から供給されていますが、水道水にせよミネラルウォーターにせよお金を支払わなければ手に入りません。
公園の水飲み場や冷水機などは無料で飲めますが、衛生面や市販のミネラルウォーターの普及により減少傾向にあります。
水道民営化によって将来的に水質の低下や水道代が上がるという懸念もあり、ますます水インフラの重要性が高まっています。
しかし天から降り注ぐ雨粒も水ですし、近所に流れている河川も元は雨水の集まりです。
その違いは人間が飲めるほど清潔な水がどうかで、浄水を仕事にして利益を出しているのが水道局です。
浄水にかかる費用など上乗せされた水を有料で供給することで社会が成り立っています。
もしこのライフラインが何かしらの理由で絶たれれば、すぐさま社会に影響を与えるでしょう。
via cwsc.or.jp
緩速ろ過と急速ろ過
現在主流となっているのは急速ろ過で、大量の水を浄化できますがシステムが複雑かつ高コストで味が悪いという欠点があります。
管理費をまかなえない小さな自治体や発展途上国などでは導入できないため、そのような地域では清潔な水が手に入りにくい状態となっています。
緩速ろ過 (生物浄化法) は急速ろ過よりも広い面積を必要としますが、薬品処理や電力を必要としないため場所さえあればどこにでも施工することができます。
村人が自ら水道施設を建設して維持管理していくような仕組みができれば、その地域の衛生状態や生活レベルが飛躍的にアップします。
水を浄化するのは砂の表面に住み着く微生物や藻類などで、生息範囲は表層からわずか数センチほどの深さに留まり、そこを通過する水を瞬時に浄化してくれます。
緩速ろ過は仕組みが単純なので小規模システムであれば自作することも可能です。
バケツや衣装ケースなどを利用するチープな方法でも生物が定着した砂層を通過してきた水はとても綺麗で飲み水にできるほど浄化されます。
井戸水は地下水を汲み上げるので天然資源ですが、緩速ろ過は人工的にろ過層を構築して水を浄化するので環境に与える影響も少ないです。
水圧をかけずに自然にまかせて浄化される水はとても味が良く、急速ろ過で失われた水本来のおいしさが生かされています。
群馬県高崎市にはかつてキリンビールの巨大な醸造工場がありましたが、それも緩速ろ過の剣崎浄水場から供給されるおいしい水道水に惚れ込んでいたからです。
日本では現在でも緩速ろ過を採用している浄水場はいくつかありますが、急速ろ過に比べると圧倒的に数が少ないです。
急速ろ過は非常にコストがかかるので利権が生まれやすい構造でもあります。
緩速ろ過がどんな優れていても強固な水利権によって阻まれるので、それによりパワーバランスがなかなか覆りません。
わざわざ水道水を不味くして浄水器やミネラルウォーターを買わせるような水利権は消えてほしいものです。
緩速ろ過は自然の縮図
アクアリウムでは昔から意識せずとも生物ろ過を取り入れており、生物を飼育するうえで欠かせない要素です。
電力でモーターを動かしてフィルターの中を素早く通過させる生物ろ過と緩速ろ過では差がありますが、どちらもバイオフィルム (生物膜) の形成が鍵となります。
たまに魚よりも水槽のろ過システムの方に熱心なろ過マニアがいますが、自作の緩速ろ過はまさにろ過マニアが作るそれに近いものを感じます。
緩速ろ過技術研究の第一人者である信州大学名誉教授の中本信忠氏は世界中でこの優れたシステムを普及させる活動をされています。
いつから私達は、水道水をあきらめ、ガソリンよりも高いミネラルウォーターを買い求めるようになったのか。
なぜ水道水は飲料水としての信頼を失ってしまったのか。
安くておいしい水道水ができないのは、水道原水の汚染が原因ではなく、これまでの物理的水処理の方法に問題があったからだった。
ヨーロッパで200年、日本の水道事業でも100年以上の実績を持つ「生物浄化法」を使えば、おいしく、安全な水道水が、これまで以上に安くつくれるのだ。
安全な飲み水に困る途上国でも、「生物浄化法」を使えば、村人たちが、自分たちで水道施設を建設、維持管理できる。
中本信忠 (著) – おいしい水のつくり方
自然は放っておくと汚いものから清きものへ変化し、わざわざ人が手を加えるまでもないというのが緩速ろ過の根源かもしれません。
風の谷のナウシカでも腐海の地下深くは清らかな砂と水の世界が広がっていました。
地球の地下水も深くなるほど綺麗で安定した量の水が流れています。
ミネラルウォーターも海外の地下水を瓶やペットボトルに詰めて売っているだけに過ぎません。
自然の力でろ過された水がおいしいのであれば、人の手が多く加わった水道水がまずいのもうなずけます。
緩速ろ過は昔から存在しますが、もう一度原点に立ち返ることで新しい可能性が見えてくるのではないでしょうか。
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