日本の街路樹が少ない理由 都市計画の疎かな地域では無闇な剪定や植栽で樹木が衰弱している

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え改めて東京が注目される機会を得ましたが、日本の都市は世界の都市に比べて街路樹が少なく管理状態も悪いです。

日本は降雨量も多く樹木が育ちやすい環境なので、水と緑の都市になっていてもおかしくないはずですが実情はコンクリートと電線に覆われた無機質な風景をよく目にします。

殺風景かといえば企業の広告ポスターや看板がずらっと並び、それが独特の東京っぽさを演出しそれを面白いと感じて訪れる観光客も少なからずいます。

数日程度なら新鮮味があって面白いかもしれませんが、その土地で長年生活するとそれらはただのノイズに変わります。

表参道ケヤキ並木や神宮外苑イチョウ並木など、あるエリアに限定すれば景観が良く樹木も生き生きと育っています。

せっかく立派な街路樹エリアが存在していても東京という大きな括りで見ると統一感がなく、 長年に渡り都市計画を疎かにしてきた感が拭えません。

建物のデザインがバラバラで道路も継ぎ接ぎだらけ、蜘蛛の巣のように都市を覆う電線と電柱、街を歩くと視界に飛び込んでくる刺激的な広告、そうした中で緑も少ないとなると知らず識らずのうちに精神が疲弊していきます。

都内には自然豊かな山林があり世界的にも珍しいですが、それに比べて山林と都市の関係が緩やかなグラデーションではなく完全に切り離されているような印象を受けます。

街路樹を見ればそのエリアを取り仕切る自治体や企業がしっかりと管理していることが明確にわかります。

樹木や草花の手入れをしている人をよく見かけるエリアはそれだけ街路樹の価値を理解している証です。

秋になると葉を落とす落葉樹を夏場に剪定して丸坊主にしたり、土の少ない場所へ大木になる樹木を植え込みそのまま放置して枯らしてしまったりと樹木を物のように扱う意識がまだまだ根強く残っています。

街路樹はただ美観を向上させるために植えるのではなく二酸化炭素や排気ガスを吸収して酸素を放出したり、夏場の強い日差しを避け路面の温度上昇を抑える木陰を作り出します。

そこへ野鳥や昆虫などが住み着けば都市部でも豊かな生態系が形成され、より奥深さのある美しい都市となります。

おそらく都市計画がしっかりしていれば街路樹についても専門家を入れて検討するので、植物虐待のような事態は起こらないでしょう。


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日本の街路樹が少ない理由

なぜこれほど東京および日本の都市は無機質なのか自分なりに考え、いくつか思い当たる理由をまとめました。

都市計画が疎か

戦後焼け野原になってから高度経済成長を経て膨大な人口を抱えるようになったので、都市計画は二の次でとにかく復興と経済発展を優先してきたツケだと思います。

電線地中化の整備は戦前から行われていましたが、お金と時間を節約するために臨時的に電柱を立て需要の高まりと共に結局切り替える間もなく放置され今に至ります。

砂地のグラウンドに遊具がポツンと置かれた昭和的な公園を見ても、ただ樹木や草花が植わっているような土地は行政からすれば無駄な空き地と見なされていたのかもしれません。

今でこそ都市緑化やすきま緑化などと行政も一定の理解を示していますが、それでも花壇に草花を植える程度で自然と都市の調和まで意識した取り組みはまだまだ少ないのが現状です。

自然災害が多い

街路樹は台風や強風を防ぐための防風林にもなりますが、折れた枝などが当たって怪我をするリスクもあるので自然災害の多い日本では無視できない項目です。

イチョウ並木はイチョウの油分が少なく水分が多い特徴を利用した火災に強い生垣として植えられていたりと、昔の人は樹木をよく熟知して都市計画に取り入れていました。

空き地が少ない

空き地はとにかく人工物で埋めてしまえと言わんばかりに建物が密集した都市部では街路樹を植えるスペースがそもそも無い場所が多いです。

狭い土地に無理に植えられた樹木は本来なら100年以上は余裕で生きる種類でも50年ほどで寿命が尽きるようです。

後から作り変えるには莫大な負担がかかるので、都市計画はその都市の価値を決定づける重要な要素だと思います。

電線や電柱が邪魔

電線地中化をしなかった事は街路樹の数にも関係していると考えて良いでしょう。

街路樹というだけあって道沿いに植えるわけですが、電線や電柱も道沿いに引かれているため樹木が成長すると電線に接触しやすいです。

木陰を作るような大きな木を植えるには邪魔になり、万が一枝が折れたり木が倒れると断線する可能性があるのでそれを嫌って植えないケースもあるでしょう。

歩道を覆い尽くすような大木が並んだ通りはその都市の歴史が感じられ、夏でも体感温度をグッと下げてくれますが東京ではなかなかお目にかかれません。

まとめ

日本は戦後から一気に経済発展して経済大国になりましたが、勢いが無くなってくると今まで置き去りにしてきた問題が次第に表面化してきました。

綿密な都市計画の元で何十年何百年と発展してきた都市と無計画な継ぎ接ぎだらけの都市では都市の成熟度が違います。

皮肉なことに発展途上国のようなまだそれほど経済力のない国の方が街路樹の状態がよくきちんと管理されています。

街路樹から文化的な豊かさを比較した時に決して先進国に劣っていないことがわかります。

行政は住民の暮らしやすさや景観の美しさよりも企業の利益を優先し、住民は都市計画など興味がなく好き放題に家を建てます。

東京湾を埋め立てたゆるゆるの土地に高層マンションを建て情報弱者に高く売りつけています。

ニューヨークのマンハッタンはいかにも埋立地のような印象ですが、もともと岩盤のうえに作られているので地層はしっかりしています。

都市計画のしっかりした都市は景観の美しさだけでなく都市機能も効率よく働き住民の命を守ります。

東京は戦後まだ大きな災害には見舞われておらず、首都直下型地震などの大災害が起きた時に都市として真価が問われるでしょう。

お店の善し悪しはトイレを見ればわかるように、都市の豊かさを判断するのに街路樹を見るのはひとつの指標になります。