なぜ田舎のお年寄りは台風の日に田畑を見に行くのか?パンとサーカスによって滅びゆく現代社会

仕事はもう、死んでいる【ノウカノタネ・つるちゃん】
目次
仕事が「死んでいる」時代の生存戦略:農民マインドから読み解く衝動の哲学
現代社会において、多くの人が「なぜ働くことがこれほどまでに虚しいのか」という感覚を抱えています。この動画では、農家であるつるちゃん氏の視点を通して、その正体が「世界からの呼びかけの喪失」にあることを明らかにしています。
近代合理主義が切り捨てた「野蛮な衝動」
現代人は、幼少期から「なぜそれをするのか」という論理的説明を求められます。学校教育も社会も、「私」という確固たる主体が、合理的な理由に基づいて行動することを「正しい人間」の定義としてきました。
しかし、つるちゃん氏が目撃してきた農村の老人たちは、そのパラダイムの外側で生きています。
- 台風の日の見回り: 経済的合理性で言えば、命を危険にさらしてまで田畑を見に行くのは「異常」です。しかし、彼らは「体が先に動いてしまう」と言います。
- アニマルスピリット: これは脳科学的に見れば、意識(理性)が介入する前にある「衝動」です。デカルト的な「我思う、ゆえに我あり」という精神の操縦席から離れた、もっと動物的で根源的な生命の反応が、本来の「働く」という行為の根底にはありました。
「パイプとしての自己」と死に際の玉ねぎ
動画の中で最も象徴的なのは、つるちゃん氏の祖母の最期のエピソードです。死に際、最後に遺した言葉は家族への愛ではなく、「玉ねぎは間引いたか?」という確認でした。
- 自己の消失: 祖母にとって、もはや「私(主語)」はどうでもよく、世界(畑)との関係性における「行為(述語)」が継続しているかどうかが全てでした。
- 縁起(ネットワーク): 仏教的な「縁起」の概念に近いこの感覚は、自分を「独立した個」ではなく、世界と接続された「一本のパイプ」として捉える生き方です。自分が死んでも、そのパイプを通じて行われる「手入れ」という関係性が続いていれば、それで満足だという身体感覚です。
資本主義による「富の抽出」と「人間疎外」
では、なぜ現代の仕事は「クソ」化してしまったのか。それは、資本主義が「しがらみ(濃密な関係性)」を解体することで富を生み出してきたからだとつるちゃん氏は指摘します。
- ATP(エネルギー)のメタファー:
分子が無理やり結合されている状態(しがらみ)から結合を解くときにエネルギーが放出されるように、人間関係のしがらみを「お金」で解体すると、そこに富が発生します。 - 「野菜のお返し」から「スーパーでの購入」へ:
隣人との「野菜をもらったら返さなければならない」という面倒なしがらみを切り捨て、お金で解決すれば人は「自由」になります。しかし、その代償として、特定の相手との間にしか生まれない「固有の衝動」を失います。 - 機能への還元:
現代の労働は、あらゆるものが「お金」という汎用的な数値に還元されます。誰でも替えが効く「機能」として扱われることで、世界からの「あなたにしかできない呼びかけ」が消え、仕事は手応えのない虚無へと変貌しました。
「パンとサーカス」に吸い取られる生命力
しがらみを断ち切り、自由になった現代人の「衝動」は、今や巨大テック企業(GAFAなど)によって回収されています。
- 偽の呼びかけ:
現実の世界(自然や地域)が呼びかけてこなくなった空白に、スマホの通知やSNSのアルゴリズムが入り込みます。 - 消費の奴隷:
暇になった個人は、TikTokやNetflixが提供する「安易で刺激的な呼びかけ」に応答し続けるだけの存在(=パンとサーカスに溺れる古代ローマ市民)となり、自ら何かを生み出すための「太い衝動」を枯渇させています。
結論:自分なりの「良いしがらみ」を再構築する
つるちゃん氏は、アンチ資本主義を唱えているわけではありません。大切なのは、「自由」と「衝動」のバランスをどう取るかです。
- 能動的なしがらみ:
全てのしがらみを受け入れるのは現代人には苦痛ですが、自分にとって「心地よい負荷」や「エネルギーが上がる対象」を選び、そこに対して意識的に「しがらみ(関係性)」を築き直すことが必要です。 - 消費から創造(縁)へ:
好きなものをただ消費するだけでなく、自ら作ったり、特定の対象に深く関わったりすることで、お金では買えない「手応えのある人生」を取り戻す。
この動画は、合理性の極北で無気力に陥った私たちに対し、もう一度「世界からの呼びかけ」に耳を澄ませ、不自由だけれど熱量の高い「衝動のネットワーク」へ戻ることを促しています。







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