山歩のすゝめ 登山やトレッキングよりも気軽に自然の空気に触れる体験
コロナ禍で他人との接触機会が減り、登山やキャンプなど人々の関心が自然の方へ向けられました。
また街中をウォーキングしたりジョギングで汗を流す人も増えて健康志向も高まっています。
本格的な登山となると道具をしっかりそろえて天候や時間を気にしながら行動する必要があります。
軽装備や状況判断を誤ると怪我や死亡するリスクがあるので、始めるにはそれなりの出費と覚悟がないと長続きしません。
登山の目的としては山頂を目指すのが最も明確な目標ですが、最近は山をただ歩くことを目的とした山歩 (さんぽ) という概念が注目されています。
昔からトレッキングという言葉があり、意味としてはほぼ同義ですが山歩はより力が抜けた気楽な印象を受けます。
山は早朝や午前中から登り始めて日没前には帰ってくるのが通例ですが、現役世代にとってはなかなか時間が取れないことが多いです。
本格的な登山ではなく午後からでも人里のちょっとした山道を歩いて帰るような過ごし方をする人が増えると、社会がより豊かになるのではないかという期待が山歩には込められています。
都市と自然を完全に区分けするのではなく、滑らかなグラデーションとして捉えることで、自然がより身近なものに変わっていくと思います。
ヤマップの『【山歩しよう。】都心から近い癒しの山歩道へ|吉岡里帆と井浦新が、ただゆったりと歩く御岳山』という動画が異例の再生数を記録して人々の関心の高さがうかがえます。
有名人が出演しているからという理由もありますが、それ以外にもゆっくりと山の自然を楽しみたいという需要があるはずです。
御岳山なのでまだトレッキングよりですが、もっとローカルな山道をゆったりと歩くだけでも十分に癒されます。
よくお年寄りが険しい山に登って遭難する事故が多発していますが、体力のないお年寄りほど山歩のようなアクティビティを選んだ方が安心です。
登頂する達成感や山頂からの眺めもたしかに素晴らしいですが、山の魅力はそれだけではなく木漏れ日や草花の香りを感じたり、鳥や虫の声に耳を傾けるなど、余裕を持って歩けるからこそ楽しめる要素がたくさんあります。
特に日本人は休日や旅行でもしっかりとスケジュールを組み予定通りに過ごす人が多いので、ただ自然の中を頭を空っぽにして歩くだけでも新鮮な体験ができるでしょう。
ウォーキングやジョギングをしている人は、普段通るコースから自然のありそうな場所へ少し距離を伸ばすだけでも何か発見があるかもしれません。
山歩は身近な行動範囲を少し広げるだけでも生活が豊かになることを教えてくれますし、人々が動き回ることでその地域が活性化することに繋がります。
日本は幸い平地を探す方が難しいくらい山だらけの国なので、どんなに都会に住んでいてもそれほど遠くない距離に山道や林道を見つけることができます。
現代人はもっと肩の力を抜いて都市と山の間のグラデーションの中を縦横無尽に歩き回るべきでしょう。
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