EVAとポリウレタンに変わる素材が登場しない限りスニーカーは進化できない
Photo by Mark Crawley
EVA (エチレン酢酸ビニル) とポリウレタンはシューズのミッドソール素材として1970年代ごろからずっと使い続けられていますが、いまだに新素材が現れることなく共存している状態です。
EVAは比較的新しい素材かと思いましたが、実はポリウレタンが登場するより前から存在していました。
EVAを使ったシューズと言えばまずクロックスが思い浮かびます。
ソールどころか全体がEVA素材なのでEVAの長所や短所がもろに現れます。
まずポリウレタンに比べて軽量なのでランニングシューズなど軽量化を追求するものと相性が良く積極的に利用されました。
優れた弾力性と柔軟性がありゴムのように低温下で硬くなりにくい特徴があります。
水も吸収しないので水場での作業にも向いています。
塩素を含まず燃やしてもダイオキシンの発生はありませんが悪臭を放つ酢酸ガスは発生します。
環境ホルモンを含まないので子供が舐めたりしても安全です。
ポリウレタンのように早期に加水分解することがないので、丁寧に扱えばシューズの寿命も比較的長いです。
欠点としては熱と薬品に弱いので夏の炎天下に屋外放置すると縮んだり変形してしまいます。
耐候性は高いのに夏場の直射日光を避けがちになるので完璧な素材とは言えません。
ポリウレタンはクッション性と耐久性に優れますが、それも加水分解が起こる前だけに限られます。
単純に比較するとEVAの方が使いやすそうですが、依然ポリウレタンフォームが幅を利かせているのはクッション性が重視されているからでしょうか。
EVAやポリウレタンに変わる新素材としてアディダスが開発したブーストフォームが世に出てきました。
発泡スチロールのような見た目とは裏腹に、これまでの素材とは衝撃吸収性と反発性において遥かに上回る革新的な性能です。
EVAの持つ欠点を克服したとアピールするも、その正体はTPU (熱可塑性ポリウレタンエラストマー) なのでポリウレタンの欠点は克服できていません。
ナイキやアディダスのスニーカーはコレクション要素が強いので、大勢のコレクターたちによって大切に保管されたまま月日を過ごすスニーカーも多いでしょう。
例えばワインなら月日が経てば経つほど風味が増すので、コレクション要素がありながらも価値が落ちません。
それに対してスニーカーは加水分解してしまえば価値を失い二度と元には戻りません。
ブーストフォームの流行はポリウレタン一強時代へと舵を切る要因となりかねません。
それで泣きを見るのはコレクターたちですが、スニーカーはそもそも履くためにあるので仕方ない面もあります。
数年後にはミッドソールがボロボロになった最新のハイテクシューズをぼちぼち見かけるようになるでしょう。
90年代のハイテクシューズが次々にお亡くなりになるのを見送りながら、歴史は繰り返すという悲しみがあります。
EVAやポリウレタンに変わる革新的ミッドソールは果たして登場するのでしょうか。
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