攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIGの移民問題と現実世界がシンクロしてきた件
攻殻機動隊シリーズは近未来の日本を舞台に様々な事件や社会問題などを通して重厚で哲学的なストーリーが描かれているアニメ作品です。
私は普段あまりアニメを見ませんが攻殻機動隊は別格で日本が誇るべきアニメ作品だと思います。
原作漫画や小説そして世界にその名を知らしめた劇場版アニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』など作品は多岐にわたります。
テレビアニメ第一弾の『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX (S.A.C.)』では汚職や薬害事件、OVAの『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society (S.A.C. SSS)』では少子高齢化・老人介護・幼児虐待など日本が直面している問題と酷似する内容が題材となっています。
ただテレビアニメ第二弾である『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』に限っては移民問題がひとつ大きなテーマでしたが、日本はこれまで移民に厳しい国だったのであまり現実感がありませんでした。
しかし最近になり政府が入管法改正案を強引に推し進めるなど、外国から移住しやすい環境整備が急ピッチで行われています。
攻殻機動隊の世界ではすでに第三次世界大戦・第四次世界大戦が勃発し、アジア各地で発生した難民を安価な労働力として招慰 (しょうい)難民というかたちで政府が招き入れています。
これは難民受け入れというよりも移民に近い印象で、政府が指定した移住区以外の都市にも難民が流入しテリトリーが拡大していきます。
彼らは決して日本に帰化しようとせず民族としての誇りを失ってはいません。
移民は戦後復興のために使い捨てにされ不満が溜まり、日本国民は帰化すらしない移民に税金を喰い潰されることに憎悪を抱くようになります。
移民や難民はヨーロッパや北米など遠い存在でしたが、いよいよ身近な問題として考える必要が出てきました。
前作は世界情勢がストーリーに関わってくる事はほとんどありませんでしたが、本作は終戦後に巻き起こる様々な問題が絡んでくるのも見所です。
現実世界も世界大戦は起きていないものの世界情勢は常に不安定であり、大国の動向次第ではいつ戦争が勃発しても不思議ではありません。
シリーズの中では一番現実と乖離していると思われた2ndが、急速に現実世界とシンクロしてきているのは皮肉なことです。
原作は20年以上も前なのに今見ても近未来を感じるのは時代設定が2030年ごろとまだ少し先の未来が描かれているからでしょう。
きっと2030年に見ても攻殻機動隊ような世界観には及びませんが、現代社会が抱える問題は色濃く反映されているはずです。
攻殻機動隊のような緻密に錬られた世界観や複雑なテーマのアニメが作られることは少なくなりました。
薄っぺらいストーリーで理解しやすく楽しいアニメも娯楽としては最高ですが、そればかり増えてしまうと作品が伝えたい本質を考える機会が減ってしまうのでバランスが大切です。
SFとはいえ現代の日本に極めて近いストーリーを描いた攻殻機動隊は見る度にいろいろ考えさせられます。
そして現実では国民投票で選ばれた政治家が国民の生活に多大な影響を及ぼす法案を次々に成立させ社会を激変させている最中であり、私たちの知らない所でろくな議論もされずに通されています。
本作では国民と難民の間に不信感や憎悪が溜まっていき、難民による一斉武装蜂起にまで発展しますが、日本ではどのような結末が待っているのでしょうか?
攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG Blu-ray Disc BOX:SPECIAL EDITION (特装限定版)
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