水墨画は筆ペン1本から始められるので敷居が低く一生楽しめる趣味

2019年9月25日


Photo by Japan Society of Boston

一般的に水墨画と聞くと古臭さやお年寄りの趣味というイメージが強いです。

しかし水墨画は墨の濃淡で自分の理想とするものを表現するという極シンプルな行為をするだけです。

中国の山水画のような地味で堅苦しいものだけが水墨画ではありません。

水墨画は基本的に一色の墨だけを使うので水彩画のように何色も絵の具を用意しなくても描けます。

さらに筆や墨がなくても筆ペンを代用することで水墨画的な表現ができるので敷居が低いです。

最近ではうす墨インクの筆ペンなどいろいろな種類の筆ペンが販売されているので、何種類かの筆ペンや水筆を組み合わせれば表現の幅が広がります。

きっちり下書きをしてたくさんの絵の具で色付けをする表現方法も素晴らしいですが、墨色や最小限の色だけに絞って描かれる水墨画はまた違った面白さがあります。

鉛筆でのスケッチは消しゴムで簡単に修正できますが、紙についた墨は消せないのでうまくリカバリーしたり味として活かすことが求められます。

水墨画は一度書き始めたらそのまま流れに乗って描き切るような勢いが重要視されるアートなので、小さなキャンバスだとあっという間に完成します。

一瞬の迷いや心の乱れがダイレクトに筆に伝わるので、そのライブ感が書道にもつながる日本伝統のアートだと思います。

中国の山水画に季節の概念を取り入れ独自に進化を遂げたのが日本の水墨画であり、もっとメジャーな存在であって欲しいですが今ひとつ人気がありません。

戦後から物理的な欲望を満たすために奔走した日本人ですがそれも過渡期に差し掛かり、再び精神的な欲望が湧き上がるなかで、水墨画のような創作活動は干からびた心を潤してくれます。

画家の人は長生きな傾向にありますが、生きる上でのストレスや感情のエネルギーを常に描いて開放しているのが良い効果をもたらしていると考えられます。

一度筆を付けたら後戻りできないのは人生と一緒で、目の前で起きた予測できない現象と向き合い、どうやってまとめ上げるかという知識や技術が経験を通じて蓄積されていきます。

水墨画を始めるメリット

画材が安い

まずどの家庭にもある習字用の墨汁や筆を代用できる事です。

正確には習字用の筆と水墨画用の筆は性質が違うので推奨されてはいませんが、最初に雰囲気をつかむ程度なら十分使えます。

筆ペンを2~3本用意すれば表現の幅は狭まりますが、より手軽に水墨画や墨絵を楽しむことができます。

本気で熱中できる趣味だと判断できてから専用の道具をそろえても遅くはないでしょう。

他のアートへ応用が効く

墨の濃淡で表現する水墨画に対して墨絵はどちらかと言えば平面的でイラスト寄りな表現です。

書道のように濃い墨で描き切るので水墨画の道具で対応することができます。

また書道に興味が湧いた場合でも墨や硯などの道具は使い回せるので無駄がありません。

水彩画まで好奇心が及んでもかすれやにじみといった技術は水彩画でも使うので水墨画の経験が活かせます。

水墨画でも顔彩という日本画用の絵の具を差し色に使うこともあるので、そうなると水彩画とハッキリとした線引きはしにくいです。

シンプルだからこそ様々なジャンルへ応用しやすいのが水墨画の魅力でもあります。

日本の侘び寂びを再認識する

余白を生かした構図や墨の濃淡だけで立体感を表現する方法は日本人の感性をくすぐります。

水墨画から掛け軸・盆栽・水石・茶道・華道など関連する分野にまで好奇心が及ぶと、その奥深さにハマっていきます。

そうした日本の伝統文化は日本人よりも外国人の方がよく熟知しており、観光の下支えをしていることは先人たちに感謝しなければなりません。

精神鍛錬になる

迷いなき線や大胆な塗りをするには研ぎ澄まされた精神が必要です。

その精神を長年の経験から手にするのか、感覚的な部分に頼るのかはわかりませんが、精神活動としてはとても充実した時間を過ごせると思います。

制約に縛られてばかりの世の中から少し離れ、自由な世界を好きなように描ける水墨画は現代人の心の拠り所になるでしょう。

水墨画だからといって特に決まり事はなく、西洋の風景を水墨画へ落とし込んでも良いし、飼っているペットや架空の風景を描くのも自分次第です。

もし描くものが定まらない時は、古来より書き続けられている四君子 (しくんし)と呼ばれる蘭・竹・菊・梅の4種が画法を学ぶうえでも重要な素材なのでおすすめです。

水墨画を始めるデメリット

とにかく地味

日本のアートリテラシーからすると美術館巡りをして西洋の名画に触れることが至高であるような風潮ですが、自国で受け継がれてきた水墨画にも目を向けると視野が広がると思います。

そして地味でシンプルだからこその空間構成や侘び寂びが込められている作品が多いので、決して西洋画に引けを取りません。

例え地味であろうとも自分の世界へ没頭できるのだから周囲の認知度など気にする必要はありません。

画材にこだわると高くつく

入り口が筆ペンや100均の筆だったとしても描き慣れてくると各々画材にこだわりが出てきます。

高価な筆は大切に扱えばそれなりに持ちますが、消耗品であることには変わりありません。

画材にこだわり出すとキリがないので、値段と性能のバランスを見極めて自分に合った画材を選びましょう。

まとめ

水墨画はあまり堅苦しく考えずに自由気ままに筆を走らせるだけで楽しいものです。

線の太さや塗の濃淡やかすれにじみ具合など単色とは思えないほど表現の幅が広いので、飽くなき探究心があれば一生描いても飽きません。

師匠を付けないと駄目など既存の固定観念に囚われたままでは文化として衰退する一方なので、もっとカジュアルに水墨画の認知度が上がれば良いと思います。