IBM Model M 名品バックリングスプリング式キーボードの打鍵音 ASMR
パソコンが本格的に普及し始めた1980年代初頭から40年ほどが経ち、一家に一台以上パソコンを持つのが当たり前の世の中になりました。
最近では逆にスマホがパソコン代わりとなり若者のパソコン離れが進んでいるようなニュースも目にします。
あらゆる分野の中でも特にITやコンピュータ分野の進歩は目まぐるしい変化で、新たな製品が次々と生み出され短い間に陳腐化するサイクルになっています。
ずっしりと重たく存在感のあるCRTモニター (ブラウン管モニター) が液晶ディスプレイに変わり、ボール式マウスもいつしか光学式やレーザーに変わりました。
もちろんパソコン本体も昔とは比べものにならないほど処理能力が上がり、ゲームを高画質で楽しんだり動画編集をばりばりこなせるようになりました。
例外としてパソコン周辺機器のなかで何十年経っても基本構造が大きく変わらず今でも十分通用するのがキーボードです。
その中でも特に名品とされるのがIBM Model Mというバックリングスプリング式キーボードで、今ではほとんど採用されなくなった機構です。
キーのすべてに金属製のバネが入っており、それが押した時の独特の打鍵感を生み出しています。
なぜ廃れてしまったかについてはコスト面もあるでしょうが、何と言っても打鍵音がうるさすぎて周りに人がいる環境だと騒音トラブルになるからでしょう。
メカニカルキーボードのなかでも打鍵音が強めな青軸が控えめに感じるほど大きな打鍵音が鳴り響き、おおらかな時代だったからこそ普及したのだと思います。
この打ち心地は他に変えが利かないので、何十年も同じバックリングスプリング式キーボードだけを使い続けるキーボードマニアもいるようです。
構造的にも非常に耐久性が高く、当時はパソコン本体と同じくらいの熱量がキーボードにも注がれていたので、妥協しない製品として現代まで生き残っています。
今ではパソコン一式購入してもキーボードはおまけ程度に薄くて安っぽいメンブレン式やパンタグラフ式のキーボードが付いてきますが、それらは数年ほど使うと調子が悪くなってしまいます。
どんなキーボードでも使い続ければそれに慣れてしまうので、一概に安いから駄目というわけではありません。
今でこそキーボードの価値が見直されリアルフォースやHHKBなどの静電容量無接点方式を採用した高級キーボードもありますが、ほとんどの人はわざわざキーボードにまでそれほどお金をかけません。
ただ何となくキーストロークの浅いチープなキーボードでペチペチと打ち込んだ文字より、一字一字しっかりと押下圧をかけて打ち込まれた文字の方がより気持ちが入っている気がします。
アメリカ西部開拓時代のカウボーイが馬は消耗品でも鞍だけは肌身離さず持ち続けるのと同様に、キーボードも例えまわりが陳腐化しても同じものを使い続けるくらい価値があるものです。
ある意味バックリングスプリング式キーボードは陳腐化しましたが、元IBMキーボード部門のスタッフだったメンバーが立ち上げたUnicompという会社がバックリングスプリング式キーボードの現行品を作り続けており、いまだIBMの遺伝子が受け継がれています。
AT車よりもMT車の方がより運転する楽しさが味わえたり、デジタル時計があるのにわざわざ手間のかかる機械式時計を愛でたりと、人間が楽しむ余地が残されてことに価値を見出す人がいます。
バックリングスプリング式キーボードも特に理由はないけれど触っているだけで楽しいと感じる貴重なデバイスであり、今もこの打鍵感を味わうために高額な値段で取引されています。
キーボードは長い年月を経て成熟し豊富な種類から選べるようになったので、ぜひ自分だけのお気に入りを見つけましょう。
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