焙烙 (ほうろく/ほうらく) ほうじ茶器 日本伝統の煎る文化を現代生活に取り入れる
焙烙 (ほうろく/ほうらく)と聞いてもピンとこない人が多いと思いますが、茶葉や胡麻や塩などを煎るための道具で、日本で戦国時代ごろにはすでに使われていたようです。
村上水軍が焙烙火矢 (焙烙玉)という料理器具である焙烙に火薬を詰めて手榴弾のような使い方をしていたという記述があります。
この事から日本では昔から食材を煎る文化が存在していたことになります。
これは年間の降雨量が多く四季がはっきりとしている気候なので、湿気を含んだり古くなった食材を煎って風味を出したり保存に適した状態へ変化させるため専用の道具まで生まれたのでしょう。
世界的に見てもここまで煎るという文化が発達している国は珍しいのではないでしょうか。
焙烙はほうじ茶を作るのに適しており、普通の緑茶を焙烙で煎ることにより自家焙煎された香ばしいほうじ茶を飲むことが出来ます。
急須から蓋と注ぎ口を取ったような構造ですが、これがちょっとした食材を煎るのに適した形状のようです。
なぜ便利な道具なのにマイナーになってしまったのかというと、スーパーへいけばすでに煎ってあるほうじ茶や煎り胡麻が売られているので、いつしか人々は自分で煎ることを止めてしまいました。
風味があるのはもちろん煎りたてが一番なのですが、一手間かけることよりも手軽さが支持されるようになったわけです。
そんな焙烙ですが現在でも生産されており、食のために一手間かける意識の高い人たちも存在するので今なお根強く残っています。
焙烙で煎ることのできる食材は基本的に入りさえすれば何でもよく、焼き芋も当初は焙烙を使って調理されていたようです。

茶葉を煎るのは中国のウーロン茶でも製造過程で釜煎りされますが、ウーロン茶の場合は煎る前に茶葉を発酵されるので、発酵させないほうじ茶とは違いが出ます。
煎らずに発酵を進ませたのが紅茶であり、これを煎っても同じくほうじ茶にはなりません。
未発酵で煎りなしの緑茶だけが焙烙で煎ることでほうじ茶として二度楽しむことができます。
茶葉の他にも胡麻を煎ったり、天然塩を煎ってサラサラの焼き塩を作ったり、銀杏や玄米やコーヒー豆を煎るのにも適しています。
日本でコーヒー好きが多いのも実は煎り加減によって酸味や苦味が変わる繊細さがあるからではないでしょうか。
日本人はコーヒー好きではなくスタバ好きだという皮肉もあるようですが(笑)
紅茶だとそもそも煎らないのでどうしても産地で選ぶ傾向になりますからね。
煎るだけならフランパンでも良さそうですが、常に器の動かさないとすぐに焦げてしまうので、小型で中身が飛び出しにくい焙烙が扱いやすいです。
ステンレス製の炒り網という道具もありますが塩のように細かな粒だと漏れるし、その点焙烙であれば隙間なく陶器なので遠赤外線効果により中まで火が通りやすいです。
近年では食を大切にする人も増えているのか、自然と煎るのに一手間かけることへの価値が見直されるようになってきました。
香ばしいもの好きには手軽な焙じ器として使い勝手が良く、一手間かけてじっくりローストしたほうじ茶やコーヒーを飲むのはとても贅沢な時間だと思います。









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