【神薬】ボトルディギング(瓶掘り) レトロガラス瓶を収集する現代のトレジャーハンティング


世の中にはあまり知られていないボトルディギングという聞きなれない言葉があります。

和訳するとそのまま瓶掘りという意味になりますが、古い時代のガラス瓶を探したり時にはスコップで地面を掘り返して探す行為を指します。

日本ではかなりマイナーですが、アメリカでは収集を目的とする趣味としては切手やコインに次いで人気があるそうです。

買って集める趣味ではなくどちらかというと狩猟や釣りのようなスポーツ感覚で当たりを求める遊びの一環だと思います。

さらに切手やコインは基本的に飾って楽しむものですが、ガラス瓶は花瓶として使ったりインテリアの一部として様々なものと組み合わせて使えるのが魅力的です。

ビーチコーミングと呼ばれる海岸で貝殻や流木そしてガラス片が波に揉まれてできるシーグラスなどを拾う趣味はたまに見かけますが、ボトルディギングはまったく見向きもされません。

欧米ではガラス文化の歴史が長く日常的に使われてきたため、ボトルディギングを狙えるポイントが多いことも趣味として定着している理由でしょう。

日本ではその辺の土を掘っても古い瓶は出てこないので、必然的に廃村やハケ(昔のゴミ捨て場)を探すことになります。

昔は今のように不燃物を回収するシステムが確立されておらず家の近くに埋められ、空き缶などはすぐに劣化してもガラス瓶はいつまでも変わらない姿で残っているのです。

日本でも生活用品としてガラスが使われていましたが、当時の国産のガラスは熱に弱くすぐに割れてしまうので、一部の大都市を除いてはあまり普及しませんでした。

それこと陶磁器の技術の方が断然すぐれていたので、わざわざ割れやすいガラス製品を使う理由がなかったのでしょう。

明治時代に入ると西洋ガラスの知識や技術を学んだガラス職人が工場で大量生産をするようになりました。


Photo by Digging Old Dumps

日本でのボトルディギングにおいて別格の扱いを受けているのが、神薬とよばれるコバルトブルーの色をした美しい薬瓶です。

戦前から作られているこの瓶は歪なかたちに気泡が入りひとつひとつ違った表情を持っているので、それがレトロガラス瓶ならではの味になっています。

神薬という名称自体かなり怪しげですが、実際にアヘンチンキ・モルヒネ・クロロホルムといった劇薬が含まれており、万能薬として普及していましたが、時代の流れと共に規制されて無くなりました。

イギリスで開発されたコロダインという薬をもとに神薬が作られ、コロダインもまた悪魔の薬という異名も持ち禁止薬となりました。

当時は身近にかかりつけの薬局や病院が無かったため、たまに来る行商から常備薬を買う習慣があったそうです。

神薬についての考察 「神薬」という薬がかってありました。

コロダインの瓶も神薬と似て美しいコバルトブルーで人気があります。

私も欧米のレトロな薬瓶がインテリア雑貨として売られているのは知っていましたが、日本にも明治・大正・昭和と近代化のなかで生また魅力的なガラス製品があることは知りませんでした。

深みのある青に漢字のエンボス加工が施された神薬瓶は、何とも怪しげでノスタルジーを感じさせる工芸品とは違った味わいがあります。

薬瓶だけに限らず昔の瓶入りジュース飲料の空き瓶や酒瓶・化粧品などの容器も埋まっているので、掘ってみるまで何が出てくるかわからないドキドキ感を味わえる現代のトレジャーハンティングだと思います。

こうした趣味を持つ人にとっては竹藪や道脇の草むらですら財宝が眠る鉱山に見えていることでしょう。

例え山奥の廃村へ行かなくても川沿いや河口付近を探せば思わぬお宝が見つかることもあるので、ポイントを見極めれば日本でも十分にボトルディギングすることは可能です。

海から流れ着く瓶は有害な物質が入っていた可能性があるので注意が必要ですが、割れてさえいなければほとんどは洗えば問題なく再利用できるでしょう。

私有地に踏み入って土を掘り返すのはダメですが、ゴミとして捨てられ土に帰らないガラス瓶を回収して再利用することは悪いことではないので、もっとボトルディギングの地位が向上すれば良いと思います。

幸いにも日本ではせいぜい明治以降のガラス瓶しか出てこないので、アメリカのように地中深く掘り返すようなことをしなくても、軽く土を払ったり落ちているのを拾うだけで回収できてしまいます。

神薬にはなかなかお目にかかれませんが、もし近くに廃村やハケらしき場所を見つけたら見事なお宝が眠っているかもしれません。

陶磁器好きは全国にもの凄い数いますが、そもそもレトロガラス瓶を探し回っているトレジャーハンターがごく少数なのでチャンスはいくらでもあります。

古いコカ・コーラのコンツアーボトルやアンティークの薬瓶を見て心躍る人には素質があります。

何十年かそれ以上前に作られたガラス瓶が再び日の目を見るというのは何ともロマンにあふれています。

人知れず野ざらしで放置され、それに耐えうるガラスという素材も改めて見直されるべきだと思います。

特にお金のかかる道具を必要とせず(遠方だと交通費はかかるかも?)ロマンと収集欲を掻き立てる趣味としてボトルディギングはおすすめです。


日本のレトロびん 明治初期から平成までのレアコレクション