キューバ大停電が映す「明日の日本」──電力インフラ崩壊は対岸の火事ではない

Photo by Nano Banana 2
2026年3月カリブ海の島国キューバで1,000万人以上が電気を失う大規模停電が相次いで発生しました。遠い社会主義国の話と思考停止するのは危険です。日本の電力インフラも、同じ"時限爆弾“を抱えているからです。
目次
キューバを覆う暗闇──何が起きているのか?
2026年3月16日、キューバ全土の送電網が一夜にして崩壊しました。エネルギー省は「国家電力系統の完全遮断が発生した」と発表し、約1,000万人の国民が暗闇の中に放り出されました。
しかも、これは単発の事故ではありません。わずか5日後の21日には同月2度目となる全国停電が発生し、今月だけで3度の大規模停電が繰り返されています。
「夕食も朝食も暗闇の中で食べ、シャワーも暗闇で浴びます。いつもすべてが暗闇の中。一晩中です。」──停電に苦しむキューバ市民の声
暗闇の中で転倒し骨折した市民、収集が滞り街中に溢れるゴミの山。これはフィクションではなく、2026年3月の現実です。国民の不満は14日、中部の街モロンでの暴動へと発展し、共産党本部が放火されるという事態にまで至りました。
停電する二重の原因
キューバの電力危機は、インフラの老朽化と地政学的な圧力が重なった結果です。
まず設備面では、耐用年数を超えた発電システムへの投資不足が深刻で、最大9基の火力発電所が停止・メンテナンス中という状態が続いていました。ピーク需要の約70%に達する電力不足が慢性化していたのです。
次に燃料面では、米国がベネズエラからキューバへの原油供給を事実上封鎖したことで、2026年1月以降、石油の輸入がほぼ途絶えました。一部地域では1日最大20時間の停電が常態化していました。
老朽化したインフラ、枯渇する燃料、逃げ場を失った国民──この三つが重なったとき、電力インフラは崩壊してしまうのです。
「でも日本は大丈夫」は本当か?
ここで「日本とキューバは違う」と思った方は、少し立ち止まってみてください。
日本の電力インフラを形成する発電所、変電所、送電線の大部分は、1960〜70年代の高度経済成長期に集中して建設されたものです。あれから半世紀以上が経過した今、設備の老朽化は静かに、しかし確実に進行しています。
経済産業省は2025年度の電力需給対策において、「供給サイドは、確保している供給力の中に老朽化した火力発電所が含まれているなど、構造的な課題を抱えており、設備トラブル等のリスクを踏まえると、予断を許さない状況」と公式に警告を発しています。
過去には実際に「予兆」も起きています。2016年10月12日、東京都内で約58万6,800戸が停電しました。
原因は埼玉県新座市の地下送電ケーブル施設での火災で、燃えたケーブルは敷設から約35年が経過した老朽設備でした。これはまだ「局地的な停電」で済みました。しかし、もし複数箇所で同時多発的に設備トラブルが起きれば──?
電力広域的運営推進機関のガイドラインによれば、現在のペースで全設備を更新すると仮定した場合、架空電線は120年、鉄塔は250年、変圧器は70年の期間を要する計算になります。現実的なペースでは、全更新は不可能に近いといえるでしょう。
インフラ維持の担い手も消えていく
問題は設備だけではありません。それを維持・管理する人材も急速に失われつつあります。
鉄道・電気などの重要インフラを支えるメンテナンス技術者は、2030年までに約30%減少するという予測が出ています。
高度経済成長期に一斉に整備されたインフラが一斉に老朽化する一方、それを支えるベテラン技術者も一斉に引退していく──これが2020〜30年代の日本が直面する現実です。
「燃料依存」という共通の弱点
キューバの停電を引き起こしたもう一つの原因は、エネルギー源の偏りです。石油に大きく依存するキューバは、供給が途絶えた途端に脆さが露わになりました。
日本はどうでしょうか。日本のエネルギー自給率は約13%(2023年度)と先進国の中でも特に低い水準にあり、化石燃料の約9割以上を輸入に頼っています。
中東情勢の緊迫化、シーレーンの遮断、地政学的な制裁措置──これらが現実のものとなれば、日本もキューバと同じ「兵糧攻め」に直面する可能性があります。
私たちはどう備えるべきか
キューバの悲劇を他人事にしないために、個人レベルでできる備えを確認しておきましょう。
【電源の確保】大容量ポータブル電源・ソーラーパネルの導入をおすすめします。スマホ・医療機器・照明を最低72時間まかなえる容量が目安です。
【情報収集手段】携帯ラジオを常備しておきましょう。停電時はインターネットが使えなくなる可能性があります。
【水・食料の備蓄】停電は浄水場や物流にも影響します。最低3日分、できれば1週間分を備蓄しておくと安心です。
【地域コミュニティ】近隣との連携・情報共有も大切にしてください。孤立した個人が最も脆弱になります。
まとめ
キューバの大停電は、老朽化したインフラ・燃料依存・メンテナンス人材の不足という三重苦が一気に顕在化した事例です。
日本はキューバより豊かで、技術力もあります。しかし問題の構造は驚くほど似通っています。異なるのは「まだ表面化していない」というだけかもしれません。
国家レベルでは、再生可能エネルギーの普及促進、老朽インフラへの戦略的投資、エネルギー安全保障の強化が急務です。個人レベルでは、「停電はいつか来る」という前提で日常の備えを見直すことが求められています。
暗闇の中で食事をするキューバ市民の姿は、私たちへの警告です。その警告を受け取るかどうかは、私たち次第ではないでしょうか。









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