羽根のない風力発電機 ボルテックス・ブレードレス 安い・軽い・安全の3拍子そろった進化系

2020年10月21日

日本ではひと昔前に太陽光バブルにより再生可能エネルギーが盛り上がりましたが、それもバブル崩壊と共に落ち着きました。

私の住む地域にも山の中腹あたりの森林を伐採し、そこへソーラーパネルを敷き詰めるメガソーラー的なものが突然現れ、環境に良いのか悪いのかわからない状態です。

寿命を迎えた太陽光パネルは処分するにもカドミウムのような有害物質を含んでおり、リサイクル技術も未熟なため決して環境に良い発電方法ではありません。

欧米諸国の主要な再生可能エネルギーは風力発電であり、環境への負荷も少ないため今後の発展が期待されています。

ただし従来の風力発電機にはいくつか弱点があり、まずある程度の風速がないとブレードという羽根の部分が回転せず発電しません。

年間を通して一定以上の風が吹く場所でないと効率よく発電することが難しいです。

ヨーロッパでは偏西風を利用して安定した発電量が見込めるので風力発電の割合が高い傾向にあります。

日本では海沿いくらいしか条件に合致せず、逆に台風のような強い風速ではブレードが破損する危険があるので停止せざるを得ません。

またブレードの回転音が騒音の原因となり住宅地では設置しにくかったり、バードストライクという野鳥が衝突する事故も構造上起こりやすいです。

そんな風力発電機の弱点を一気に解消したのがスペインのVortex Bladeless社が開発したボルテックス・ブレードレスという羽根のない風力発電機です。

スペインはヨーロッパのなかでも特に風力発電の割合が高く、新技術の開発にも熱心な国からこのような風力発電の進化系が生まれたのは必然でしょう。

構造が風車のような見た目からただの振動する柱に変わり、小刻みに揺れる様はエクササイズ用のボディーブレードのようです。

筒の中にはコイルや磁石などで作られた発電装置が入っており、風が吹くと渦励振 (うずれいしん) という現象が起こり、共振して増大したエネルギーで発電するという仕組みです。

吊橋などで渦励振が起こると時に橋を破壊するほどのエネルギーになることもあり、開発者の一人がそれを上手く利用すれば発電に活かせるのではないかと思ったのが切っ掛けで研究がスタートし商品化されるまでに至りました。

ブレード有りの風力発電機では年平均風速6m/s以上が必要と言われていますが、ブレードレスだとわずか風速3m/sあれば発電することが可能となりました。

東京の年平均風速が約3m/sほどなので、全国のかなり広いエリアで発電が可能になるかもしれません。

ブレードレスは回転部分がないので強風にも耐えバードストライクのリスクも減りました。

製造コストも安くメンテナンスもほとんど必要ありません。

軽量なので一般家庭の屋根や庭に設置することができ、日本でも2020年に販売を目指しています。

おそらく新型コロナウイルスの影響でプロジェクトはかなり遅れている可能性はありますが、商品化されるVortex Tacomaという製品だと高さは約2.7m、重さ約15kg、発電量100W/hで1基あたり200ユーロ前後(日本円にして約2万4300円) で販売される予定です。

100Wのソーラーパネルでも1~2万くらいするので、太陽光発電の他に風力発電が選択肢に入ってくると、より柔軟な自家発電プランが組めます。

太陽光発電と違って風さえあれば夜間でも発電するので、より安定した電力供給が見込めそうです。

最初は見慣れない柱を見てかなりインパクトを受けるでしょうが、もし普及すれば家の屋根や庭先で揺れるVortex Tacomaを見られる日が来るかもしれません。

Vortex Bladeless Tacoma field test with nice wind! (2019)