古着屋が衰退している原因のひとつにポリウレタン衣類が関係しているのではないか?
Photo by Random Retail
ポリウレタンに依存する衣類
現代社会はファストファッションの台頭により新品でそれなりの品質の服が格安で手に入るようになりました。
それが原因で古着屋が急激に姿を消しているという見方もできますが、それとは別の問題として古着として再利用できる衣類自体が減っているのではないかという憶測です。
かたやリサイクルショップは増加傾向にあるので、衣類以外の買い取り需要はあるのでしょう。
近年ポリウレタン加工の技術が進歩してより天然の皮革に近い質感になったり、ストレッチ性が向上してあらゆる衣類に使用されるようになりました。
しかし現段階では経年変化による加水分解を完全に食い止める方法は確立されておらず、製品が作られた段階から加水分解へのカウントダウンがスタートします。
衣類に含まれるポリウレタンの割合や環境の違いによって寿命に差はありますが、おおよそ3年前後で加水分解のリスクが高まると言われています。
古着屋にもポリウレタンを含んだ衣類が売られてますが、人工皮革・合成皮革・フェイクレザー・スパンデックスなど名前を変えて忍び込んでいます。
また例え記載が無くても異なる素材を接着するために使われていることもあるので、とても使い勝手のよい素材だからこそこれほど普及したのだと思います。
下着や靴下など消耗品と割り切ってしまえばポリウレタンは非常に優れた働きをしますが、特にレディースの衣類に多く使われており、最近ではメンズの衣類にも着心地を重視したストレッチ素材として使用されることが増えました。
消耗品ならまだしもアウターにまでストレッチ性を持たせた商品が登場するなど、何でも有りな状態になっているので完全にメーカー側にも責任があります。
こうした商品はあまり知識のない消費者とクリーニング業者の間でトラブルになることもしばしばあり、どれだけ気を配っても逃れられない宿命を背負っています。
本来は素材の品質だったり裁断や裁縫の技術で着心地の良さを追求していましたが、ポリウレタン素材を混ぜることで着心地の良さを低コストで実現することが可能となりました。
ほんの数%混ぜるだけでも見違えるように生地の伸縮性が増すので、タイトな服でも着る人の体型をそれほど気にせずに商品展開できます。
この点だけならまさに理想的な素材なのですが、その分だけ劣化したときの絶望感が半端なく、衣類との付き合い方まで変えてしまうほどの影響力があります。
受け継がれない衣類
昔は丁寧に織られた着物を何世代も受け継いで着られることもありましたが、今では個人だけで1~2年で使い捨てるほど消費サイクルが早まっています。
このような環境下で生まれてきたのがポリウレタン衣類であり、とても何十年も着ることのできないほど繊細な性質を持っています。
あまり長持ちする服は買い替え需要が少ないので商売にならないという見方もありますが、そうした社会構造がもはや限界に来ており、衣類との付き合い方も変えていく必要があると思います。
先祖代々受け継いだ100年以上前の着物を大切に保管していたり、そこまで遡らなくても戦時中や戦後のミリタリー古着に価値があったりと衣類を受け継ぐという事は文化や歴史を継承する意味もあると思うので、使い捨てる服を量産しても後世に何も残らない状態になるのではないかと危惧しています。
そうした中で古着屋が衰退していくのも当然の成り行きではないでしょうか。
それに気がついているメーカーも少なからず存在するはずですが、愚直に丁寧な服作りをしているメーカーほど利益を出しにくい構造になっているので、これからが踏ん張りどころだと思います。
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