劣化して寿命を迎えた鉛蓄電池を路上で修理してリサイクルする中東のエンジニア
鉛蓄電池はおもに自動車のバッテリーとして今でも広く使用されていますが、実はリサイクル率が新聞紙やアルミ缶よりも高く環境にやさしい素材だと言えます。
リチウムイオン電池がほとんどリサイクルされていないのに比べるとその差は歴然です。
単純な構造であるため手作業でも使い古した鉛蓄電池を繰り返し使用できる状態に修理することが可能です。
先進国に比べてまだ発展途上にある中東の国々では路上で鉛蓄電池を修理する光景が見られます。
発展途上国においても鉛蓄電池は物流や交通を支える重要な役割を担っているので、こうしたリサイクルが行われているからこそ経済が回っているのだと思います。
作業場へ持ち込まれた鉛蓄電池を開封すると真っ黒に汚れた鉛板やセパレーターが出てきます。
素人目からすればすぐにでも破棄したくなる見栄えですが、エンジニアは自らの手で蘇らせる術を持っています。
エンジニアの座る場所の傍らには鍋が置かれており、その中には溶けた鉛が入っています。
日常的に鉛の蒸気を吸っているエンジニアの健康状態が心配になりますが、排気ガスや砂ぼこりの飛び交う路上で作業している時点で気にしても仕方がないです。
鉛の融点は327.5度なので鍋で加熱するだけで容易に溶けはんだ付けにも使われるほど加工がしやすい金属です。
鉛が固まる前に薄く伸ばしてから整形して新しくパーツを自作しています。
汚れのこびりついたセパレーターを綺麗なものと交換して、鉛板と交互に積み重ねていきます。
手慣れた作業が熟練した職人技という感じで面白いです。
ケースを綺麗に洗ってから再び溶かした鉛でパーツを結合したり端子なんかも作っていきます。
鉛は冷えると一瞬で固まるので、これだけ自由自在に鉛を扱えると楽しそうです。
最後にケースに収納して溶かしたプラスチックで密閉すれば完成です。
この時出ているプラスチックの蒸気も有毒ガスを含んでそうでなかなかヘビーな作業です。
電解液を入れて充電することでまたどこかの自動車の動力としてしっかりと働いてくれます。
鉛蓄電池は世界的にもリサイクル率の高い消費財のひとつであり、新しい技術が次々と誕生する現代においても廃れることなく使われ続けています。
どれだけ高級車でガソリンを満タンに入れてもバッテリーがなければ動かないので、現代人にとって鉛蓄電池は必要不可欠な存在です。
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