肥後守(ひごのかみ) 青紙割込 かつて子供の相棒だった国産折りたたみナイフが風前の灯火


Photo by Folding Knife Online Store

今は海外の多種多様な折りたたみナイフ(フォールディングナイフ)が簡単に手に入るようになりましたが、日本にも肥後守(ひごのかみ)という優れた折りたたみナイフがあります。

肥後守は兵庫県で生まれたのに肥後は現在の熊本辺りを指す地名ですが、九州から持ち帰った刃物を改良して作られたのが名前の由来です。

ちょうど団塊世代が子供だった1950年代ごろから工作や鉛筆を削る道具として子供に持たせていたようですが、鉛筆削り器やカッターナイフの普及により次第に姿を消しました。

浅沼稲次郎暗殺事件の実行犯が未成年だったこともあり、刃物=危険というイメージが世間に広まり『刃物を持たない運動』によって子供たちから刃物が奪われてしまいました。

しかし昔は当たり前に子供たちが肥後守を持ち歩いていましたが、肥後守で切りつけ合うような事件は聞いたことがありません。

それは子供ながらにナイフの危険性を理解し、喧嘩に刃物は持ち込まないという線引きをしていたからでしょう。

肥後守も最盛期には40もの製造業者がひしめき合っていましたが、なかには粗悪品も紛れておりそれによるトラブルが相次いだ事も自ら首を絞めたのだと思います。

そうした不運が重なり売り上げが激減してほとんどの業者が廃業に追い込まれるなか、現存しているのは永尾駒製作所(カネ駒)ただ一社のみです。

肥後守は永尾駒製作所の商標登録であり、いま販売されている肥後守と銘打つ刃物はすべて同社かそのOEMに限定されています。

売り上げの落ち込みもさることながら他にも数年前まで高齢である四代目・永尾元佑さんの後継者が決まっていないという不安要素がありました。

2008年の朝日新聞の記事にも五代目は未定だが体が動く限り現役で作り続けたいという思いを打ち明けていました。

肥後守(ひごのかみ)団塊世代に人気再燃 | 朝日新聞

しかし幸いなことに後継者として五代目・永尾光雄さんが肥後守を引き継ぐことが決まり、2010年に入社されていることから無事世代交代が行われて良かったと思います。

消滅しかかっていた所へ後継者だけでなく、昔を懐かしむ中高年を中心に肥後守が再評価されるようになり、最悪の状況からは脱したのではないかと思います。

最近では刃物を持たない運動の反動からなのか、逆に子供に刃物を使わせて鉛筆削りをさせる小学校もあるようです。

肥後守は安くて構造がシンプルなので壊れにくく刃が剥き出しではないので子供に持たせても割りと安全な刃物だと思います。

肥後守といっても現在は1000円を切る安物から1万円以上するマニア向けの商品まで様々な種類がありますが、一番オーソドックスなのはやはり青紙割込でしょう。

手頃な値段ながら真鍮ハンドルが美しく国産刃物の魅力を味わえるので、肥後守といえば青紙割込を避けては通れません。

青紙鋼は耐摩耗性に優れており粘り強い金属で一度研いだ刃の切れ味が長持ちする特性があります。

鋼なので手入れを怠ると錆びやすいですが、しっかり研いで手入れしてやると驚くほど切れ味が鋭くなるのでマニアが病み付きになるのもわかります。

研ぐのが簡単なのも肥後守の特徴で刃先の傾斜に沿って平行に研げば自然と切れる刃が付きます。

買ったばかりでもそこそこ切れますが、研ぎ直すことで自分だけの肥後守に仕上げることが出来ます。

カッターナイフのように刃を消耗品として使い捨てず、研ぎ直せば一生使っていけるのも今の時代にマッチしています。

五代目になって品質が落ちたという噂も聞きますが、刃物という繊細な道具なのでどうしても品質に個体差が出てしまうのは仕方ありません。

数年前までいつ生産終了してもおかしくない危機的状況でしたが、当面は五代目がしっかりと良質な肥後守を作り続けてくれることに期待しましょう。

もっと握りやすいハンドルなりロック式で安全性を高めた高品質なナイフはいくらでも存在しますが、それでも肥後守に魅力を感じるのは長年培わてきた伝統に惹かれるからでしょうか。


永尾駒製作所:昔なつかしいナイフ 肥後の守 青紙割り込み 中