火鉢は暖房や調理にも使え輻射熱で身も心も温まる昔ながらの生活道具


Photo by 土佐木炭

昔はどの家庭でも当たり前に使われていた火鉢も今となっては見る影もありません。

睡蓮鉢の代わりに本来とは異なる使われ方をする火鉢はたまに見かけますが、火鉢を日常的に使っている家庭は珍しいです。

木炭の扱い難さに比べて石油や電気で簡単に温まるストーブやエアコンが普及していきました。

ただ近年猛威を振るう自然災害によって機器が動作できなくなると昔ながらの道具が見直されます。

火鉢は部屋全体の空気をポカポカと暖める効果はありませんが、陶器製の火鉢だと木炭の熱を吸収して輻射熱として放出するため体の芯から温まります。

現代の住宅は気密性が高く木炭を燃やす際に発生する一酸化炭素を逃がしにくいので換気をしないと中毒になります。

エアコンはそうした危険性がありませんが、空気を循環させて暖める仕組みのためそれなりに温度を上げないと体が温まりません。

生まれた時からエアコンで室温を管理され、電車に乗ろうがデパートへ行こうがどこもポカポカな状態で寒さに対する抵抗力が下がってもおかしくありません。

昔の日本家屋はすきま風が吹き込み決して室温は高くなかったと思いますが、それでも快適に暮らせていたのは火鉢の輻射熱のおかげではないでしょうか。

体の芯が温まり寒さへの抵抗力も損なわれない暖房器具が火鉢だとしたら、エアコンはただ人間を弱体化させているに過ぎません。

夏の猛暑日が増えたように冬の厳しい寒さも昔に比べれば減っており、現代人は昔に比べて気温の変化に弱くなったと見て良いでしょう。

輻射熱で暖める道具は火鉢だけでなく例えば反射式の石油ストーブも輻射熱で体を温めながら空気の対流で部屋全体を暖めるので理にかなっていると言えます。

火鉢はさらに古い道具で手間はかかりますが、石油ストーブよりも趣があり暖を取るだけでなくお湯を沸かしたり簡単な調理をできるのが特徴です。

七輪ほど調理用に特化せず、より生活の中に溶け込んだ道具として人々の暮らしを支えてきたはずです。

七輪だと煙や臭いが気になりますが、火鉢で餅を焼いたりスルメイカを炙る程度であれば現代の住宅事情でも十分に楽しめます。

換気は絶対に必要ですがそれは石油ストーブでも同じことなので、そこまで一酸化炭素中毒に怯えなくても大丈夫です。

一酸化炭素警報機があれば火鉢をなおさら安全に利用することができます。

また囲炉裏と違いどこでも移動して使えるのが火鉢のメリットなので、庭やベランダへ持っていけば換気も不要です。

今ではメインの暖房というよりも趣味の道具に成り下がってしまいましたが、火鉢を囲んで家族や友人たちと団らんする時間はとても有意義だと思います。

もちろん一人小さな火鉢で熱燗や酒の肴を作りながらゆっくり晩酌するのも粋な感じです。

わざわざ家に囲炉裏を作るのは大変ですが、火鉢ならある程度道具をそろえて室内用の炭を選べばそれほどハードルは高くなさそうです。

現代の道具だからといって完全上位互換で何でも優れているという事はなく、様々な事情で廃れていった昔ながらの道具も多いです。

火鉢に関してはエアコンにはない輻射熱による暖房効果と調理性能を併せ持った万能な道具として現代まで受け継がれています。


火鉢っ子(小)かすみ白