山怖 山にまつわる怖い話や不思議な話は下界にはない魅力が詰まっている
ひと昔前はテレビで心霊番組がたくさん放送されていましたが、最近ではめっきり数が減ってしまいました。
インターネットや映像作品で発信できるので、必ずしもテレビにこだわらなくても良い時代になったのが大きな理由でしょう。
テレビ番組だとコンプライアンス的な規制が厳しく、企画段階でNGが出てしまうことも増えているようです。
画質が上がり写真や動画の加工技術が発達していくら怖いものでもリアリティに欠けてしまいます。
何事もそうですがあまりクリアになりすぎると、些細な部分が気になってしまい全体の魅力が下がってしまうことがあります。
一方で怪談は根強い人気があり視覚ではなく聴覚を刺激するので、時代が移り変わっても生き残っていくだろうと思います。
それでも街が明るく綺麗になったことで得体のしれない話というよりは、人怖や日常の出来事に基づいた話が増えています。
それとは別に山怖というジャンルがあり、神秘的で得体のしれない怖さが残されています。
やはり人があまり踏み入れない場所でこその底しれぬ不気味さがありますし、ただでさえ危険な山中でそうしたものと遭遇する絶望感が読み手の好奇心を掻き立てます。
山は下界から離れた特殊な環境なので、幽霊だけでなく野生動物や不審者など街では出会えないようなものが彷徨いています。
また山岳信仰や妖怪など古き良き日本の奥深さが残っているのは山だけではないかと思います。
人が山へ登る理由は山頂からの綺麗な景色を眺めたり、森林浴で癒やされることだけでなく、山の持つ危険性や自然の不条理さを知ることも含まれています。
おそらくヘリコプターで山頂に降り立ってもそれほど感動しないでしょうし、額に汗しながら自分の足で登り切り疲労感を味わいながら観る景色こそ至高です。
天気が荒れれば途中で撤退することもありますし、山頂についたとしても濃霧で周囲が一切見えないことも多いです。
街には人が溢れていますが、山は一部を除いて人の数が少なく孤独になりやすい場所です。
必然的に怖い経験をしたり不思議な現象に巻き込まれる確率が高まります。
一般的な怪談が苦手な人でも登山中の不思議な出来事だったり、猟師の生活などに興味がある人は多いでしょう。
ただ怖いだけでなく山での教訓になることもあるので、それが山怖の魅力につながっています。
日本は山が多く今のようにレジャーで遊びに行くというより、生活の中で山へ踏み入ることが多かったはずです。
昔の人は人間が暮らす生活圏とこれ以上立ち入ってはならない自然との境界線を把握していましたが、今では勝手に土足で踏み込んでくるので山の住民にとっては迷惑でしょう。
山怖は現代人が見失っている自然と対峙する意識を恐怖や不可思議によって呼び覚ましてくれます。
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