ムクロジ (ランドリーナッツ・ソープナッツ) 天然の界面活性剤サポニンを含んだ自然に優しい洗剤
Photo by cocoonecoliving.com
普段の生活で食器を洗ったり洗濯する時には石鹸や合成洗剤を使うのが当たり前となっていますが、石鹸が使われ始めたのは明治以降で合成洗剤に至っては戦後になってからです。
それ以前はムクロジやサイカチといった木の実や灰汁などが洗剤の役目を果たしていたようです。
産業革命によって安価で安定的に大量生産できる石鹸や合成洗剤が普及していきましたが、環境意識の高まりと共にこうした自然由来の洗剤が見直されています。
特にムクロジはアジア圏に広く分布しており、ランドリーナッツやソープナッツと呼ばれインドでは今でも庶民の間で使われています。
サポニンという成分が界面活性剤の役目を果たして泡立ちによって油汚れを落とし、弱酸性なので手にも優しく絹やウールにも安心して使えます。
ムクロジの木の実を天日干しただけなので余計な化学物質が衣類に残留する心配がなく敏感肌への刺激も少ないです。
柔軟剤を入れなくてもふんわりとした仕上がりになり、すすぎの時にもムクロジを入れっぱなしにすることでサポニンが柔軟剤のような働きをしてくれます。
洗浄力は普通の洗剤と比較すると50%ほどらしく、ひどい汚れ落としには向かないと思いますが、大人ならあまり強烈に服を汚すことも少ないので十分な気がします。
ムクロジという和名がつけられているように日本にも自生しており、羽子板の羽の先にある黒い錘もムクロジの種子だそうでそれだけ硬くて丈夫な素材です。
販売されているのはどれも輸入品ばかりで値段も高く、国産のムクロジであればもっと需要はありそうですが、ほとんど生産されていません。
人工的な香料や強い泡立ちと洗浄力ばかりがもてはやされてきた結果、こうした古来より使われてきた洗剤が生産されなくなったのは残念なことです。
昔は井戸端にムクロジが植えられていたようなので、その実を各自が収穫して消費することでわざわざ洗剤を買わずとも洗濯が完結されていました。
アルカリ洗剤としての灰も煮炊き用の薪の燃えカスから手に入るので、昔の方が実に無駄のない暮らしだと言えます。
いつしか煮炊きは電気やガスで行うようになり、洗剤は買ってくるのが当たり前になりましたが、そのような暮らしは長い歴史からすればつい最近の出来事です。
海外だけに留まらず日本でも古来より洗剤として使われてきたムクロジの価値を見直して、再び生活の中へ取り入れていくような流れが生まれてほしいです。
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