エドワード・ホッパー アメリカの実社会を通して己の孤独な内面を表現した20世紀を代表する画家

Photo by Wikipedia, Nighthawks (1942)
目次
エドワード・ホッパーと謎多きアメリカ美術
あなたはエドワード・ホッパーというアメリカの画家をご存知ですか?
日本ではヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、パブロ・ピカソ、クロード・モネなどが人気ですが、いずれもヨーロッパの画家です。
エドワード・ホッパーは1920年代から1960年代かけて活躍し、本国では巨匠のひとりとして評価されていますが日本ではあまり知名度がありません。
そもそもアメリカ美術というものがそこまで関心が向けられず、アンディ・ウォーホルやキース・ヘリングなど1960年代以降のポップアートばかり注目されています。
エドワード・ホッパーの作品はポップアートと比較すると地味な印象ですが、激動の時代に生み出された作品とは思えないほどアメリカの平凡な実社会が描かれています。

Photo by Wikipedia, Automat (1927)
アメリカであってアメリカでない
写実的かと思いきや細部の描写は簡略化されており、また適度な余白によって人物や構造物がより孤立して見えます。
彼の代表作である『ナイトホークス』でも人物が配置された明るい店内に対して、左側の屋外は薄暗くのっぺりとした描写でどこか架空の世界のようです。
店内もよく観察すると物が少なく無機質で大きなガラス張りも実に奇妙な構造です。
日本に住んでいても昼間は人通りが多い場所でも終電後の繁華街や深夜の客がいない牛丼屋など、ふと非現実的な風景と出会うことがあるかと思います。
その日の体調や気分によって急に寂しくなったり、物思いにふける瞬間がありますが、作品を通してエドワード・ホッパーの内面と共鳴する感覚になるのが魅力のひとつかもしれません。

Photo by Wikipedia, Early Sunday Morning (1930)
時代背景と画家の内面
当時のアメリカは第一次世界大戦、第二次世界大戦、冷戦、ベトナム戦争と争いが絶えず、さらに世界恐慌や特需景気などで経済が目まぐるしく変化しました。
しかしエドワード・ホッパーは頑なに象徴的なアメリカ像を描かず、アメリカの何気ない日常を描くことにこだわりました。
本人は無口で気難しく内向的な人物だったようですが、それは作品にも如実に現れています。
作品に描かれている人物たちもあまり表情を出さず、何かを主張しているような人はいません。
ほとんどは人物すら登場しないリアルな風景画で古き良き20世紀のアメリカが描かれています。
構図も現代のストリートスナップに通じる斬新なものがあり、多くの写真家に影響を与えていると言われています。
孤独・静寂・余白など日本人の美的感覚に近い要素があるので、もっと有名になってもおかしくないはずですが、力強いアメリカ像とはかけ離れているので、アメリカ側としても積極的にアートを押し付けるようなことは控えたのかもしれません。
グローバリズムが限界を迎え、再び分断へと世界が移り変わるなか、改めてエドワード・ホッパーの良さが身に染みます。

Photo by Wikipedia, New York Movie (1939)
孤独は心の安らぎ
エドワード・ホッパーが生きていた時代に比べてインターネットが発達してフェイクニュースが横行したり、これまで知られていなかった裏側が暴露されるなど何を信じればよいのかわからなくなる事が増えました。
表側も派手に加工されたり誇大広告によって精神が疲弊するような情報であふれています。
エドワード・ホッパーというフィルターを通して描かれた風景はそういった雑味がなく、すっと体に入ってきてその時の状態によって見え方が変わります。
名画を見るときにはそれなりに集中して向き合わないと、ただただ圧倒されて終わってしまいますが、エドワード・ホッパーの作品はどんな人にでも寄り添ってくれる寛大さと隙が残されています。
今だからこそこの時代のアメリカ美術を学んでみるのも良いかと思います。








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