ダーチャ (菜園付きセカンドハウス) ソ連崩壊後の経済危機をロシア国民は自給自足で乗り切った
Photo by Why come to the city of Perm?
目次
ダーチャの成り立ち
ロシアまだがソビエト連邦だった時代にスターリンが強制的に農地を奪いましたが、国民たちはせめて自分たちが食べる分だけの農地は確保したいと要求して獲得したのが今日まで残るダーチャの歴史です。
ロシア語でダーチャ (与えられたもの)が由来とされているように、当初は貴族それから農民だけでしたがそのうち労働者にも広まりました。
結果としてこの国民の選択が、ソ連崩壊後の深刻な経済危機を耐え抜く生命線となりました。
ハイパーインフレーションによりお金の価値が急落し給料も支払われない。食料調達すらままならないほどの過酷な環境の中で支えとなったのがダーチャでした。
ロシアは幾度も経済危機に見舞われますが、ダーチャの強力なコミュニティのおかげで最悪な経済状況にもかかわらず餓死者が出なかったそうです。
実に国民の8割ほどがダーチャも所有しジャガイモなどの丈夫で主食となる野菜を栽培する自給力が高かったからこそ乗り切れたのだと思います。
どんな荒れた土地でもたくましく育つジャガイモは特に米や麦が育ちにくいヨーロッパを中心に人類が生き残るための貴重な栄養源として貢献度が非常に高いです。
ダーチャでの暮らし
中流以上の家庭はロシアの短い夏をダーチャで過ごすことが多く、長期休暇や週末になるとダーチャで家庭菜園を楽しんだり、ゆっくりと家族で過ごす時間を大切にします。
もともとは貴族が余暇を楽しむ要素が強かったダーチャですが、大衆に広まり栽培した野菜を収穫・加工して売ることで収入を得る兼業農家的な家庭も生まれました。
自分たちで育て自分たちで食べる野菜なので農薬や肥料は極力使わず自然の力で栽培した野菜作りにこだわっています。
週末にちょっと畑をいじる程度だとその方が手間も少なく安全でおいしい野菜が採れるので無理なく続けられます。
都会暮らしの多い日本人からするとダーチャでの暮らしは地味でつまらなそうと思ったり、自然の中で贅沢な時間を過ごしているなと思ったり、人によって様々だと思いますが自給力の面で優れていることは確かです。
日本の食糧自給率
日本の食糧自給率について調べてみると農林水産省がカロリーベースでは39%ほどで減少傾向にあると言っている反面、世界的には生産高ベースで見た66%という指標の方を重視しているという意見も見受けられました。
どちらにしても経済危機や海外から食べ物が輸入されなくなってしまった時に国民はどう食い繋ぐかという問題は付きまといます。
国がある程度は備蓄してはいるものの一般人が自力で食べ物を得る手段は無いに等しいです。
食べ物だけでなくリン酸などの重要な肥料も輸入に頼っているので、それが入ってこなくなった場合に現状の農業では野菜の収穫量が激減することは避けられません。
食糧危機だけではなく今世界中でリン資源の枯渇が危ぶまれています。特にリン酸は花や実をつけるために必要とされている栄養素なので、果物やトマトやナスなど実を食べる野菜の農家は大打撃を受けると思います。
自然農法の可能性
そんな現代の肥料や農薬を使った現代農業とは正反対にある自然農法が注目されています。
川口由一さんは自然農法で永続的な農業を目指しています。
農家の跡取りとして近代的な農業を営むなかで疲弊し体調を崩したことをきっかけに自然農法に目覚め、農業のかたわら経験して蓄積した知識を多くの人たちに教える活動もしています。
川口由一さんが講師として教える赤目自然農塾には農業関係者は少なく、都会から学びに来る人が多いのだそうです。
自然から離れた環境にいるからこそ逆に自然農法への興味が湧くのかもしれません。学んだ知識を都会に持ち帰り近場の家庭菜園や近場の農地で自然農法を実践したり、学んだ後に田舎へ引っ越して専業として仕事にするなど様々です。
自然農法が拡大することで本当の意味での食糧自給率が上がり、災害や経済危機に強い国になっていけば良いですね。
福岡正信
Photo by Wikipedia
福岡正信さんは自然農法を確立して日本ではマイナーだけれどアジアやアフリカでは国家戦略として農法を学ぶ国があるほど偉人レベルの人物です。
それ故に自然農法のことを英語で“the Fukuoka Method"という呼ばれ方もします。
川口由一さんも福岡正信さんの著書『わら一本の革命』影響を強く受けており、多少農法は違えど精神的な部分は継承しながら農業を行っています。
自然農法の実践的なノウハウが載っているというよりは、思想的な部分やもっとバックグラウンドのことから説明されているので、これからこの世界に入ろうとする人には最適な本ではないでしょうか。
川口由一さんも書籍を出されていますが、より具体的な方法が載っており実践的な知識を得たいのであれば大いに役立ちます。
自然に調和のとれた草ボーボーのなかで元気に育つ野菜の写真を見ると生命力の強さを感じます。
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