文庫版 スモールハウス 3坪で手に入れるシンプルで自由な生き方

高村友也(寝太郎)さんが2012年に出版した単行本『スモールハウス 3坪で手に入れるシンプルで自由な生き方』が文庫化され手に取りやすくなりました。

小さな暮らしでエコや清貧などの思想を押し付けるのではなく、人がスモールハウスで生きる事とは何ぞやという哲学的な要素を含んでいます。

著者の実践しているBライフ(ベーシックライフ)は少なからず経済社会からの恩恵を受けているので、すべてを自給自足で賄う仙人のような暮らし方ではありません。

それでも著者自身が実際に自作の小屋を建て質素に生活しているうえで書かれた本なので説得力はあります。

Bライフも決して完璧ではなく世間から見れば浮世離れした社会不適合者に見られても仕方ないですが、情報発信をする実践者がまだまだ少ないため本にまとめる事の価値は十分にあると思います。

文庫化されるような本は人気があったり、より幅広い層に末永く読んでもらうべき内容が選ばれやすいので、世間的に見ても一定の評価が得られた結果ではないでしょうか。

断捨離ブームが起きて片付いた部屋を眺めた時に、生きるために必要な部屋の広さも考えるようになり、それがスモールハウスへの関心につながったのでしょう。

ただ寝太郎さんの小屋はいかにも自作しました感が強く雑木林の中に佇んでいるので、それを見て憧れを抱く人は自然と絞られます。

メディアに登場するような小屋暮らしをしている人たちは、見かけよりもコストや実用性を重視した小屋に住まれている事が多いため、どうしてもホームレスの延長のような誤解を受けやすいです。

一方で海外のタイニーハウスは母数が多いのもありますが、小屋自体がおしゃれで内装にも気を配っていたりと、興味のない人にも興味を抱かせるような訴求力があります。

それはそれで費用がかかるので、最低限の暮らしを求めるBライフとは合致しないのかもしれませんが取っ掛かりとして有効です。

日本でもタイニーハウスを販売する業者をちらほら見かけるようになりましたが、まだまだ発展途上といった雰囲気です。

寝太郎さんは高学歴でありながらこのようなライフスタイルを選んだわけですが、氷河期世代かもしくはギリギリその後生まれで、バブル崩壊の余波が残る時代に社会人になりました。

社会が立ち行かなくなりそうな中でそうした現実と向き合いながら生き方を模索していったのでしょう。

様々な問題を抱えながらも成り立っている社会が本当に破綻した後には、小さな暮らしをせざるを得ない状況が待っているかも知れません。

すでに経済社会で揉みくちゃにされ生活保護や刑務所の方がましな生活をおくれるようなワーキングプアが多く存在し、そうした人の逃げ道になるのならスモールハウスはもっと普及するでしょう。

年金先延ばしで下がる・生活保護下がる・税金上がる・保険料上がるでは八方塞がりなので自発的な行動が必要です。

家賃の支払いが無くなれば仕事でお金を稼ぐプレッシャーから開放され、結果として心にゆとりが生まれれば視野を広く持ち考えることができます。

食費は極端に食い過ぎたり贅沢しなければ毎日お腹いっぱい食べてもたかが知れています。

畑が作れるくらいの土地があれば自分で食料を生産することも出来ます。

そのための先行投資が辛いですが、その先の生活を考えればラットレースのようなワープア以上の苦しみは無いはずです。

寝太郎さんの場合は貧困だからスモールハウスに住んでいるのではなく、ライフスタイルを突き詰めた結果だと思いますが、それは人それぞれ理由が違って当然だと思います。

長引く不況でブラック企業が増殖して働き方改革などが叫ばれていますが、それと並行して暮らし方改革も議論するべきです。

スモールハウスに長年住み続けることも一種の才能だと思います。

小屋を建ていざ暮らし始めても次第に窮屈になり元の生活に戻りたくなる人もいるでしょう。

大切なのはいつでも自分をリセットしてやり直せる拠点があるという事で、年齢や心境の変化でスモールハウスがベストでは無くなる場合もあります。

寝太郎さんは年中小屋に閉じこもっているわけではなく、河川敷やゲストハウスで寝泊まりしたり海外で生活する時もあります。

これが何十年と住宅ローンを組んでマンションや一軒家に住もうものなら、なかなか今の状況においてベストな選択が出来なくなります。

常により多くの選択肢があること、身軽に動けることが本当の意味で自由な状態ではないでしょうか。

私も北方・関東・南方にそれぞれ小さな拠点を作って季節ごとに移動しながら生活する妄想をしたりしますが、大半の人は小屋作りまで行動を起こせません。

DIY知識なし・現地と自宅との往復・面倒な手続き・引越し後の仕事などいくつかの障壁があるためです。

今後スモールハウスに住む人が増えれば、スモールハウス付きの土地を買ったり借りれるようになるかもしれません。

人口減少で特に田舎の土地は余ってくるので、小さな暮らしをしたい人向けに開放しても良いのではないでしょうか。

現に買い手が付かず古民家ごと無料で譲渡されるケースも増えているようです。

仕事は庶民ができるような職業は徐々に減ってくるでしょうし、もしベーシックインカムが導入されたら田舎でも何とか生活の目処が立ちそうです。

ベーシックな住居と収入があればそこを拠点に活動していけるので、精神的な安心感は現状より高まりそうです。

小さな暮らしは特別目新しいことではなく価値観として受け入れられるかの問題なので、もし何かに縛られ苦しい思いをしているのであれば、そこから抜け出すヒントになるかもしれません。


スモールハウス (ちくま文庫)