映画『降りてゆく生き方』公開以来DVD化せず全国各地で異例のロングラン上映 3.11以降さらに関心高まる

2018年4月13日

oriteyukuikikata
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商業映画や資本主義に一石を投じた作品

映画『降りてゆく生き方』は2009年に公開されてから全国各地で小規模ながらロングラン上映されている異例の作品です。

主演の武田鉄矢さんもこの作品に感銘を受け、度々節目に行われる上映会に立ち会う際にはなんと丸一日ノーギャラで舞台に上がるという男気を見せました。

この作品は映画館では上映されず2015年現在、DVD販売どころかTV放映すらも予定はないので、よほど時間とタイミングが合わないと見ることが出来ません。

さらに口コミで評判が広がり、公開から6年が過ぎた現在でも毎月のように上映会が行われ、この作品に魅了されて集まったボランティアが中心となって支えているという異例の作品となりました。

これまで数々の映画やドラマで仕事をしてきた武田鉄矢さんも、この作品のあらすじを初めて見たときさすがにヒットするような作品だとは思いませんでした。

しかしまわりの雰囲気から他とは明らかに違うものを感じ取り引き受けたそうです。

莫大な資金を投じて大ヒットを託される多くの商業的な映画とは真逆のヒットよりも見る人ひとりひとりの心を動かすような小さな映画は、トップにまで駆け上がった俳優の心も鷲づかみにしました。

フィクションが現実とシンクロし始めている

降りてゆく生き方は2011年に起こった東日本大震災より前に公開された作品ですが、いろいろこれからの日本に関するキーワードが散りばめられており、実際にそれが現実となってきている状態です。

3.11で個人ではどうすることもできない圧倒的な無力さを感じ、国家やインフラの脆弱性が表立ち大きな意識の転換点となりました。

日本の豊富な水資源森林が徐々に外国資本により買い占められ、あくまでフィクションの世界で語られていたことが現実に起こり始めています。

生き方をダウンシフトする選択

先進国を筆頭にとにかくあらゆる手を使って見果てぬ山頂を目指してきましたが、いよいよ山頂まで登り切るとそこには想像していた光景は無く、どこまでも殺伐とした世界がただ広がるのみでした。

日本の人口も2008年をピークに減り続けているので、絶妙なタイミングで降りてゆく生き方が公開されたことになります。

緩やかな衰退のなかでダウンシフトしていければよいのですが、政治がいまひとつ舵取りできずにいるので、緩やかどころかいつ何が起こってもおかしくないような局面に差し掛かっています。

ダウンシフトが必ずしも良いわけではありませんが、生き方や社会の在り方として選択できる余地を設けていかないと、上に目をやるばかりでは奈落の底まで転げ落ちていくことになりかねません。

実は何も無いと見捨てられた地方の田舎に、物質的な豊かさではない未来の生き方のヒントがたくさん隠れているかもしれません。

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